フッ素加工(テフロン加工)フライパンについて、実は有害な物質が使用されており、使用しないほうがいいといったウワサは聞いたことがあるだろうか?
この記事では、フッ素加工の科学的な側面に焦点を当て、誰でも理解しやすいように安全性と危険性について解説します。
フッ素加工(テフロン加工)とは何か
フッ素加工フライパンは、「フッ素樹脂」で特殊コーティングされたフライパンだ。
このコーティングにより食材がフライパンにくっつきにくくなり、調理の油を減らすことができる便利な調理器具だ。
皆さんの家庭にも一つはあるのではないだろうか?
ちなみに、テフロン™(Teflon™)はフッ素系樹脂加工法でアメリカのケマーズ社が商標登録している。
フッ素加工の特徴特徴と利点
非粘着性、耐熱性、耐薬品性
フッ素加工の代表的な特徴として、非粘着性があり、前述の通り、コーテイングされたフライパンに食材が粘着しづらくなる。
また、耐熱性があり、高温に耐えうるためフライパンなどのコーティングに適した素材であることは確かだ。
さらに、耐薬品性も備えており、化学薬品や酸に対しての耐性、化学物質や酸による腐食を防ぐ性質もある。
家庭から産業まで幅広く利用
フッ素加工は家庭から産業まで幅広く利用され、前述の通りフライパン、家庭では「ベーキングシート」がよく使用される。
一方、産業用途では食品包装や工業製品の表面処理など、さまざまな分野で利用されている。
その耐久性と多様な用途性から、フッ素加工は現代社会ではなくてはならない便利な素材だ。
フッ素加工の安全性、危険性
フッ素加工に使われるフッ素系樹脂には安全なものとそうでないものがある。
安全なフッ素系樹脂
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)
多くのフッ素加工調理器具に使用されている。フッ素系樹脂のひとつ。
PETFの安全データシート(物質の安全性に関する資料)では
・急性毒性 :経口 ラットLD50 1250 mg/kg 以上 マウスLD50 12500 mg/kg 以上
・動物実験 :皮膚には刺激性はない。動物及び最近培養実験では遺伝子毒性を示さない。
・発癌性 :日本産業衛生学会(2012 年度版)、 OSHA(米国労働安全衛生法)、NTP(米国国家毒性計画)のいずれにも記載なし。
IARC(国際癌研究機関)分類では、グループ 3(人への発癌性があると分類できないレベル)に該当する。
と記載されており、安全性の高さが確認されている。
※急性毒性について体重1kg当たりのラットに1250mgのPETFを口から摂取させた場合、50%のラットが死亡という意味ではあるが、60kgの人間に換算すると75gのPETFを一度に経口摂取させることになるためほぼありえない量と考えられる。
有害なフッ素系樹脂
ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とペルフルオロオクタン酸(PFOA)は、環境中で分解されにくく、高い蓄積性があることから、環境への影響や健康リスクが懸念されている物質だ。
PFOS については、半導体用反射防止剤・レジスト、金属メッキ処理剤、泡消火薬剤などに。
PFOA については、フッ素ポリマー加工助剤、界面活性剤などに過去には使用されていた。
ただし、有害なフッ素系樹脂は現在は使われていない
国際的な条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs 条約))に基づき、PFOS は 2009 年に、PFOA は 2019 年に廃絶
の対象とすることが決められている。
日本でも当然、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)に基づき製造・輸入等を原則禁止している。
注意点
過熱により有毒ガスが発生する
現在のフライパンに使用されているフッ素系樹脂のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)そのものは人体に害はないが、260度以上の高温になるとPTFEが劣化。約350°C以上になると分解し、500℃以上に加熱すると有毒なポリマーガスが発生する可能性が報告されている。
このポリマーガスには人体に有害な物質が含まれており、めまいや吐き気、頭痛、呼吸困難を引き起こす可能性がある。
また、フッ素加工の空焚きによりペットの鳥が死んでしまった例もある。
まとめ
フッ素加工は利便性から家庭から産業まで幅広く活用されている。
過去には有害なフッ素系樹脂が使用されていたが、現在は規制によりフッ素系樹脂PTFEがメインに使用されているため安全性が確認された。
ただし、フッ素加工フライパンの空焚きにより有毒ガスが発生するおそれがあるためその点に関しては注意が必要。